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ワザ研 − リーダー達のワザ研究 −

奮闘するリーダー達には元気がぎっしり。"ワザ研"では裏を取材して、
皆さんの「快適」と「スムーズを支えるリーダー達の物語を取り上げてゆきます。
グリーンヒルホテル神戸 統括総料理長 岡本 勝弘
▼ワザ研調査報告 第10回
「おいしい"サプライズ"を支える好き"と"情熱"」
〜まだ見ぬライバルとも競いあう、そんながむしゃら修行の記憶。
グリーンヒルホテル神戸
統括総料理長 岡本 勝弘
取材:窪一(ホットワイヤー・プロジェクトリーダー)
 岡本さんは根っからの神戸人。一旦喋りだすと、その人懐っこいトークは止まらない。 「僕が生まれたのは須磨と長田の間くらいの"板宿(イタヤド)"って言う下町。」子供頃の食べ物の思い出はまずお好み焼。ソースは"どろ"。本当においしいお好み焼きが少なくなってきているのは、いろいろな材料がはいってきて、複雑になったため。

「僕が大切にしてるのが、記憶にあるお好み焼きがもつ素朴さ。目指している料理は、たとえばビーフシチューのような洋食の代表的なメニューで、誰にも負けないものを見つけて行くこと。」
 オリジナルで実現したいレシピは、2品か3品なのだそうだ。だけど岡本さんはそんな料理をこつこつとめざしている。
 「勢いあるなぁ。」岡本さんの語りは、相手をぐいぐいと押してくれる。

 

*料理人をめざすきっかけ。
 「物心ついたとき、事情があって弟の食事も僕が作っていた時期があるんです。」ある日、友人が岡本さんの焼きそばを食べた。しょう油とサラダ油で中華風。だけど"おかん(母親の関西言葉)が作るのより美味い"と喜んでくれた。こうした言葉が料理人になれと言うメッセージだったそうだ。「やはり美味しいって言われるとうれしいじゃないですか。」

 最初の職場は、三宮にあったロシア料理「モスクワ」でアルバイト。包丁が使えて、お客様にお金を払ってもらえる最初の体験。
「壷焼きって料理があったんです。今で言うパイ包みスープ。壷の中にマトンのシチューやストロガノフいれて、パン生地で包んでオーブンで焼くもの。これが最初にお客様にだした思い出深い料理。ストーブ前とかソーシエはさせてもらえなかったのですが、料理の工夫をがむしゃらに覚えてきましたね。」

クリスマスイメージ


*僕には料理しかなかった。
 岡本さんが調理師学校でた時代はポートピア博があった頃。当時はまず、接客サービスを数年経験してから厨房に入るのが業界の常。「料理を志した同期は13人。今も料理をしているのは僕だけ。僕には料理しかなかった。」

 接客をしながらも、なんとか料理をしたかった岡本さんは、夜、仕事が終わってから、キッチンに忍び込んで、先輩の食べるものを工夫して作った。「例えば中華のパントリーなら四角い中華包丁しかないでしょ。それを工夫していろんなモノを料理しましたよ。どんな形でも良いから料理をしたかった」


 グリーンヒルホテル神戸のレストランで時おりキッチン・スタッフがお客様の前に料理を持って現れるって素敵なパフォーマンス。だけど、誰でもできるわけじゃない。こうした経験があるから今でもスマートな演出が可能なのだ。
イメージ

*見えないライバルとの戦い。

 岡本さんが創るランチのコンセプトは「サプライズ」その料理はとてもユニークなのだ。発想のバラエティさはどこから来るのか聞いてみた。

 「料理の学びを教えてくれたのが、ニューポートホテル時代の料理長や先輩。給料の大半を料理書に換えましたよ。あの頃、聞く前に自分で調べたのか?が常識だった」自分で調べたように作ってみて「間違っているじゃないか、こう作るのだ」と叱られたらしめたもので、一生忘れないのだそうだ。それは体に刻みこむようにワザを覚えてゆく日々。「一から教えてもらうのはね、効率が良いようだけど身につかない。」岡本さんは笑いながら語るのだけど、凄みがあった。

 「良く思ったのは、無数にいる同じ年の料理人のこと。どんな技術を持っているのか、どんな知識をもっているのかわからない。その見たこともない彼らに負けたくないと思った。仕事場でそんな事を考えている時、一分一秒、ドキドキしていました。」

 この気持ちは、とても良く解った。

 

*手が出る、ナイフが出る、油も...。
 「僕の時代、みんな殴られて育てられた。」厳しい独特な調理の世界だったから、いろんな事が学べた。だけど残念なことも多々あったから、そうした環境は作らないそうなのだ。厳しさは大事、だけど憎しみが残ったらそれはあまりに残念。代わりに岡本さんの指導は「逆算」を志向しているのだ。それは「この味を作れ」と取り組む目標と、材料などのヒントだけを渡して考えさせるもの。スタッフはその味をどうすれば実現できるのか悩みぬくことに取り組んでいる。

 「こんな料理が作りたいとか、あの味が作りたいと頭に思い描く力が備わるんです。」レシピやルセットとおりに作ってもそれは自分の味じゃないと岡本さんは言い切る。「これをやってないと創る楽しみがないんですよ」

 「そうしていてね、街のレストランで新しいモノ食べてても、美味しいな!と思ったとたん、どうして作るのか、頭で描いちゃう。そして近いところが創れていっちゃうのよ。」岡本さんは美味しいものにめぐり合うと、それがラーメンでも分解しちゃうのだ。
 「この仕事だけかもしれないけど、好きと情熱と努力がね、なにより大切。考えながら料理に取り組んでいる連中は顔つきが違う。」


 インタビューの後、クリスマス料理の撮影だったのだが、見事に盛り付けられた料理をテーブルに並べる、岡本さんの料理人チームの横顔の頬には小麦粉、そして目はきらきら輝いていた。起業直後の喰えない頃、星の数程いるこの世の商人の中で、いったい僕は何番目の実力があるのだろうかと馬鹿な想いを持ったもの。岡本さんの見えないライバルとの修行の話に同じ想い出が蘇った。

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